ふるさと福井CMコンテスト ご講評

最終更新日 2022年1月28日ページID 048698

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 ふるさと福井CMコンテスト2021 講評

 審査員長 山根一眞
 福井県交流文化顧問、福井県年縞博物館特別館長、ノンフィクション作家

 

 「ふるさと福井CMコンテスト」には248もの応募作品があり、12名の審査員はともにそのCM動画を視聴し熱い議論を交わしました。最終審査に残った作品だけでも35点、審査員は時に笑いながら、時に食い入るようにそれらのCM作品を視聴していた姿が印象的でした。 

 いずれの作品からも、生徒たちが討議によって企画を立て、構成を考え、撮影ロケを行い、ナレーションや画像や文字を加え、さらに凝った編集を経て30秒に作りあげる努力がひしひしと感じられました。私たち審査員は、何よりも、子どもたちの福井県とそれぞれの地域を愛する思いに深く感動、共感を覚えました。 

 作品の中には、表現したいことが多すぎて30秒で言い尽くせていないものも少なくありませんでした。「30秒では短すぎる」という思いもあったかもしれません。しかしテレビ放送のCMは、5秒、10秒、15秒、20秒、30秒、60秒が中心で、30秒は長い方です。 

 私は、NHKテレビのキャスター仕事を7年間続けた経験がありますが、ロケ現場での報告は最長でも30秒でした。経験を重ねたことで、時計を見なくても30秒きっちりに話をまとめることができるようになりましたが、どんなテーマでも30秒あれば必要十分な情報は込められます。もっともその30秒間に、無駄な情報をそぎ落とし、必要不可欠な情報だけをいかに盛り込むかが大事なのですが。 

 「ふるさと福井CMコンテスト」に課せられたテーマは、自分たちの地域の魅力を存分に訴え、それを視聴した方々に「訪ねてみたい」と思わせることにありました。そのためのCM製作では、以下の要素を忘れないことです。

 魅力を一点に:自分の地域の魅力の一番の要素を絞ってアピールする
 地域の優位性:その魅力が他の地域にはない訪ねる価値があることを訴える
 アクセス情報:その地域がどこにありどの季節が訪問にベストかを伝える
 表現の斬新さ:表現が斬新で思わず引きつけられるよう動画を作りあげる

 審査会ではこれらの要素を見きわめながら、選考を進めました。入選作品にはこれらの要素が認められましたが、入選を逃した作品にも楽しい動画が少なくありませんでした。しかし、表現が斬新なのにテーマがしぼり切れていなかったり、その地域がどこにあるのかなどの情報が欠けているため入選を逃した作品もありました。

  今回の「ふるさと福井CMコンテスト」は最初の試みでしたので、応募した皆さんは手探り状態で苦労されたと思います。しかし今回の経験をもとに、「必要不可欠な要素を込め斬新な表現を30秒で行う」ノウハウとは何かが学べたはずです。それはCMのみならず、皆さんが説得力のある意見を堂々と発言する能力を身につけることにつながったはずです。

 「ふるさと福井CMコンテスト」は画期的な挑戦でした。おかたいはずの行政がこのような「やわらかなコンテスト」を立ち上げ、248作品もの熱い応募があったことを心から喜んでいます。福井県教育庁がこういうかたちでの教育のありようを全国に発信した意義もはかり知れず大きく、ぜひ来年度以降もこのコンテストを続けてほしいと願っています。

 

以下は、各部門の最優秀賞と優秀賞の作品についての講評です。

【小学校部門】
南越前町立河野小学校「河野ソング」は、テーマソングで伝える表現が斬新で、CMはまさにこれだなと思わせました。CMでは歌の力は大きいだけに、さらなる歌に挑戦して下さい。大野市阪谷小学校「星空リレー」は、地域振興に尽力している方々に登場してもらった行動力、星型クッションのリレーの演出が見事でした。勝山市立成器西小学校「勝山に来てね」は、映像に加えてカード型の文字の使い方が上手で伝えたいことのダイレクト表現が目をひきました。敦賀市立松原小学校の「気比神宮を紹介あかりとしずく」は、アニメキャラによる進行展開で若い人たちにもアピールしている点がなかなかでした。

【中学校部門】
小浜市立小浜第二中学校「神のまち 小浜」は、「小浜って何もないよなぁ」という逆説的なシーンから始まり、一転、小浜の神秘的な面白さに引き込んでいくプロ的な表現力を感じさせました。福井市越廼中学校「サプリメント『越DGs』」は、テレビショッピング形式を使い、越廼をSDGsのサプリメントになぞらえる発想には舌を巻きました。越前町立越前中学校「We Love Echizen」は、美しい海や伝統行事などを通じて生徒たちの越前町への愛をストレートに表現しており好感がもてました。福井県立高志中学校「恐竜、日本海へ」は、福井県ならではのモチーフである恐竜を東尋坊に重ねて見せる意外性に、どうしてこんな発見ができたんだろうと心奪われました。

【高等学校部門】
坂井高等学校「いこっさ!三国」は、始まりが福井駅から三国へ走る電車のシーンで、見る人にこの「先に何があるんだろう」という興味をそそる演出で、「来県者」への効果的な勧誘に仕上がっていました。大野高等学校「水っていいな」は、あえて大野観光を訴えず、美しい大野の水の世界だけを見せることで心をとらえる力があります。勝山高等学校「何もないとは言わせない」は、スライドショーで小浜市の「お水送り」など勝山市に限らず広く福井県の観光資源に目を配っている度量の広さに感心しました。武生商工高等学校「明治に繋がるトンネル」は、ひそかな人気がある古いトンネルに光を当てゾッとするような映像詩に仕上がっていました。