第407回定例県議会知事提案理由説明要旨
令和元年6月28日 第407回定例県議会
知事提案理由説明要旨
福 井 県
第407回定例県議会の開会に当たり、県政運営の所信の一端を申し述べますとともに、県政の諸課題および令和元年度6月補正予算案の概要につきまして、ご説明申し上げます。
4月23日の私の知事としての初登庁から2か月余りが過ぎました。この間、「徹底現場主義」、「県民主役」、「市町協働」の考えの下、組織改正と人事異動を行い、新たな県政を力強く進めるための基本的な体制を整えました。そして今回、県民の皆さんに「幸福度日本一」を実感していただくための最初の予算案を本議会に提出いたしたところであります。
「令和」という新しい時代には、地方への新たな人の流れを創ることが最も重要です。4年後の北陸新幹線福井・敦賀開業はゴールではなく、新時代のスタートであります。長期的な展望に立ち、高速交通体系の整備進展を最大限に活かしながら、人口減少、長寿命化、急速な技術革新など今後想定される大きな環境変化に立ち向かい、県勢をさらに発展させていかなくてはなりません。これまでのマニフェスト政治から、県民の皆さんと将来のビジョンを共有しながら進める行政に転換することが必要です。
このため今月21日、県庁内に「福井県長期ビジョン推進本部」を置き、私や全部局長が参加して福井の将来を描く議論を開始いたしました。今後、各界各層の代表者等による「長期ビジョン推進懇話会」を設置するとともに、県議会をはじめ、各地域、各世代など多くの方々と意見交換を重ね、新たなビジョンを年度内に策定してまいります。
それでは、県政の諸課題および予算案の概要につきまして、ご説明申し上げます。
まず北陸新幹線の整備促進であります。
金沢・敦賀間の工事進捗については、先月、九頭竜川橋りょうの橋桁の架設が完了するとともに、新北陸トンネルは既に延長約20kmの9割の掘削を終え、年度内に貫通する見込みとなりました。県内のあらゆるところで工事が急ピッチで進み、開業への期待が高まってまいりました。
敦賀・新大阪間については、先月、鉄道・運輸機構が大まかな駅の位置およびルートを明らかにし、環境アセスメントに着手しました。今月14日には、「北陸新幹線早期全線開業実現大阪協議会」が設立され、関西から大きな力で新幹線を引っ張る態勢が整ったことから、これを機に関西との連携を一層強化し、1日も早い大阪までの全線開業を目指してまいります。
並行在来線については、県、沿線市町、鉄道事業者等からなる「福井県並行在来線対策協議会幹事会」を先月開き、出資金の額とその負担割合についての案をまとめました。この8月に準備会社を設立し、必要な社員の確保と育成に努めてまいります。
今後、新幹線開業に向けては、福井の魅力の発信やおもてなしの充実などに着手するほか、新たに策定する観光戦略に加え、「北陸新幹線開業対策加速化プラン(仮称)」を年度内にまとめ、県民全体で開業に向けた準備を進めてまいります。
恐竜博物館の機能強化については、これまで機能拡充の必要性や立地場所、整備運営手法等について調査検討を行ってまいりましたが、その内容も踏まえゼロベースで見直しを行いました。新幹線開業や中部縦貫自動車道全線開通の効果の最大活用と開館から20年を経過することによる老朽化を念頭に、オールシーズン体験可能な恐竜博物館にフルモデルチェンジすることにより、140万人の来館者を目指していきたいと考えております。世界に誇る恐竜化石の研究ならびに情報発信の拠点として、未来に続く恐竜博物館を目指し、拡充する施設の内容や規模など機能強化の新たな展開について検討してまいります。
一乗谷朝倉氏遺跡博物館(仮称)については、昨年度中に実施設計を終えており、今年度から、一乗谷の繁栄を支えた川湊施設を体感できる「石敷遺構展示」や朝倉氏の栄華を物語る館の原寸再現など、日本の中世の歴史を楽しみながら学べる施設として整備を進めてまいります。
一方、昨年の「国体・障スポ」のレガシーを活かし、今後はスポーツを通じた交流に一層力を注いでまいります。
県内での全国規模のスポーツ大会等の開催に対し支援するとともに、県、市町、民間企業等が一体となってスポーツによる地域の活性化に取り組む「地域スポーツコミッション」の設立に向け、準備を進めてまいります。
東京2020オリンピック聖火リレーについては、来月1日からランナーの募集を開始いたします。来年5月の県内全17市町を通る聖火リレーの実施に向けて準備を着実に進め、県民のオリンピックへの機運醸成を図ってまいります。
さて昨年度の社会人のUIターン者数は719人となり、統計を取り始めた平成19年度以降連続して増加し、過去最多となりました。
学生のUIターン就職については、大学1年から卒業後3年までを対象とした全国初の交通費支援制度を創設するとともに、県外大学との就職協定を倍増し、学生のUIターン就職を全力で応援してまいります。
人の交流や物流を後押しする幹線道路網等の整備について、スピード感を持って対応してまいります。
今週25日には、石井国土交通大臣に対して、中部縦貫自動車道大野油坂道路の早期開通と舞鶴若狭自動車道の全線4車線化について要望してまいりました。引き続き、県選出国会議員、県議会、沿線市町と協力し、国に強く働きかけてまいります。
国道8号の福井・石川県境部については、約9kmが4車線として、この4月から新規に事業化されました。今後も石川県と緊密に連携しながら、早期の工事着手と福井バイパスの4車線での早期完成を国に強く要請してまいります。
開港120周年を迎える敦賀港については、この4月に新たに日本海側で唯一となる博多航路が開設されました。今後更なる物流機能の強化を目指し、港湾計画の見直しに着手してまいります。
次に、産業について申し上げます。
私は、農林水産業は本県をブランドアップできる主要な産業と考えております。
アジアへの輸出拡大に向けては、昨年に続き、タイのバンコクにおいて、県内事業者が参加する商談会や本県の食などを売り込む提案会を開催いたします。また今年度からは、現地で営業活動を行う窓口を香港に設置し、新たに輸出に取り組む事業者を応援してまいります。
一方で、小規模な農業の可能性を拓いていくことも重要です。新たな作物の導入や加工品の開発など、農家の自由なチャレンジを応援するとともに、中山間地域においては、草刈を行う除草ロボットや農薬散布用のドローンの導入に対して支援を行い、高齢農家の作業負担の軽減を図ってまいります。
来月20日には、美浜町の園芸研究センターに園芸体験施設をオープンいたします。自分で収穫したトマトを使ったピザづくりなど、多くの県民や子どもたちに、楽しみながら園芸に関する理解を深めてもらい、交流人口の拡大と地域の活性化につなげてまいります。
水産業については、本年8月に産学官が連携して学術研究、産業支援、人材育成を総合的に推進する組織として、「ふくい水産振興センター」を小浜市に設立いたします。IoT等を活用した養殖システムの開発や、サーモン、カキ類の生産体制の構築などを進め、雇用の創出や漁家収入の向上につなげてまいります。
本県の林業は、これから多くの木材が成熟期を迎えつつあり、供給量の増加への対応が急務です。今後は国内だけでなく、新たに経済成長が見込まれるアジア諸国に進出し、県産材の販路開拓を行ってまいります。
さて最近の経済情勢については、国は6月の月例経済報告において「景気は輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している」としている一方で、中国の景気減速などによる海外経済の不確実性が見られ、今後は県内の経済団体と緊密に連携しながら、対応していく必要があると考えております。
雇用状況については、5月の有効求人倍率が2.05と依然として高い水準にあり、人材確保が引き続き大きな課題であります。
この4月から外国人労働者の受入れを拡大する国の新たな制度がスタートし、県でも、「人材確保支援センター」における企業の相談体制を強化するほか、ワンストップによる生活相談窓口を設置するなど、外国人の受入れ環境を整備してまいります。
昨今、全国的に企業の事業承継が進まずに廃業となる事例が増加しております。県では、これまでの親族等への承継に加え、親族以外の第三者への事業承継を支援するとともに、後継者候補を全国から公募するプロジェクトを実施いたします。
さて今月15日から福井市で開催された「宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)福井大会」に、世界25か国から1,000名を超える研究者が参加しました。本県の宇宙産業振興の取組みをPRしたほか、福井の技術力を国内外の研究者等に向けて発信いたしました。
次に、子育て・教育について申し上げます。
今月発表された平成30年の本県の合計特殊出生率は1.67となり、23年ぶりの高い水準となりました。本県が全国に先駆けて実施してきた3人目以降の保育料無償化などの支援による成果と考えます。
先月10日、改正子ども・子育て支援法が成立し、本年10月から幼児教育・保育の無償化がスタートする見通しとなりました。県としても、更なる支援の充実が必要と考えており、今年度中に新たな子育て支援計画を策定してまいります。
また保育士等を確保するため、「保育人材センター」を設置するなど、保育の受け皿を整備し、子育て環境の充実に努めてまいる所存です。
私立高校については、国において来年4月から、世帯年収約590万円未満世帯の生徒を対象に授業料を実質無償化することとしております。これにあわせ県独自に、来年4月の入学生から無償化の範囲を県立高校と同じく、世帯年収約910万円未満世帯の生徒まで拡大いたします。家庭の経済事情に関わらず、進学先の選択の幅を広げ、県内高校の教育力や魅力の向上につなげてまいります。
さて県立高校の丹南地区の再編については、来年4月、新たな総合産業高校となる「武生商工高等学校」を開校いたします。また校舎については、令和7年度を目途に、現在の武生工業高校の所在地に集約したいと考えております。
今後も各地区における生徒数が減少していくことから、教育委員会において、高等学校教育問題協議会を開催し、学校の特色強化や地域との連携など、県立高校の在り方について検討を進めてまいります。
県立高校の学習環境の改善については、普通教室の空調設備の更新を順次行うとともに、普通教棟のトイレを全て洋式にするなど、生徒が集中して学べる学習環境を整備してまいります。
不登校児童生徒への対応については、小中学校を長期間欠席している児童生徒が約700人いることから、各市町に家庭訪問支援員を配置し、適応指導教室への通所、学校復帰などにつながるよう支援を行ってまいります。
県立大学においては、福井県の農業新時代をリードする人材を育成するため、幅広く「農」を学ぶ「創造農学科」を設置いたします。
キャンパスについては、あわら市の生物資源開発研究センターを活用することとし、来年4月の開設に向け、既存施設の改修等を進めてまいります。
次に、防災対策について申し上げます。
今年は平成16年7月の福井豪雨から15年の節目の年となります。昨年の2月豪雪や西日本豪雨をはじめ、近年、自然災害が頻発・激甚化しております。このため、国の「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」を最大限活用し、道路の法面対策、河川内の樹木の伐採や浚渫などを精力的に進めてまいります。
今月9日、若狭町熊川において建設が進められてきた河内川ダムが全国で令和初に竣工したダムとして供用を開始いたしました。昭和58年の事業開始からこれまで、ご尽力いただいた関係者の皆様に深く感謝申し上げますとともに、これにより、洪水被害の軽減と嶺南地域の活性化に大いに寄与するものと期待しております。
緊急医療用のドクターヘリについては、嶺南地域を対象とする滋賀県との共同運航に続き、先月、岐阜県と共同運航に関する協定を締結し、大野市和泉地区を対象に運用を始めました。今後さらに、県内全域を対象とした単独運航に向け準備を進めてまいります。
さて原子力政策については、廃炉や40年超運転、使用済燃料の中間貯蔵、放射性廃棄物の処分などの様々な課題があります。私は、副知事時代を含め、福井県の原子力に携わってきた経験から、県民の安全確保が何よりも最優先という大きな方針の下、これらの課題に対応していく所存です。
先月29日には、まず発電所の現場確認が重要と考え、稼働中の大飯発電所を視察しました。また今月上旬には、原子力3事業者のトップと面談し、安全確保に万全を期すよう求めました。
エネルギー政策は、国の根幹となる政策の一つであり、今週25日には、国に対し、原子力発電に対する国民理解の促進や使用済燃料の中間貯蔵施設など、国が責任をもって取り組むよう要請しました。また、「もんじゅ」については、国が原子力機構をしっかり指導・監督し、廃止措置作業が着実に進められるよう強く求めたところです。
エネルギーを活用した地域振興については、「もんじゅ」の廃炉など本県を取り巻く環境が変化する中、今後は、原子力はもとより、再生可能エネルギーなど様々なエネルギーを活用した産業活性化やまちづくりを進めることが重要です。このため、地元市町や県議会、専門家等のご意見をお聞きしながら、嶺南地域に多様なエネルギーに関する産業・技術・人が集まる「エネルギー・コースト」の実現に向け、新たな計画を年度内に策定してまいります。
最後に、行財政改革の推進について申し上げます。
今般、県議会や民間有識者の意見を踏まえ、令和5年度までを期間とする「行財政改革アクションプラン(案)」をとりまとめたところです。今議会でのご議論をもとに、新たな行財政改革を進めてまいります。
また新しい施策にいち早くチャレンジして取り組めるよう、各部長の権限において試行的に事業を行うための「政策トライアル枠予算」や嶺南振興局において迅速に判断・決定し、執行できる「嶺南振興枠予算」を創設いたしました。
以上の結果、一般会計の補正予算規模が309億円となり、本年度予算額の累計は、4,942億円となりました。
その他の議案につきましては、それぞれ記載の理由に基づき提案いたした次第であります。
以上、私の県政に対する所信の一端と県政の重要課題等について申し上げました。なにとぞ慎重なご審議のうえ、妥当なご決議を賜りますようお願い申し上げます。
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