職場のトラブルQ&A ~兼業理由の懲戒解雇~
問
私が勤めている会社では、就業規則に「会社の許可なく他に雇用されたときには、懲戒処分とする」との項目があります。先日、休日に会社に無断でアルバイトをしていることが判明し、これを理由に「懲戒解雇する」と言われましたが、応じるしかないでしょうか。
答
就業規則に「副業・兼業の禁止」を定めることは、労務提供に影響を及ぼしたり、企業・職場秩序に影響を及ぼすことを防止するためのものと解されています。
裁判例でも、兼業することにより本来の労務提供が困難になったり企業の経営秩序を害したりするときなどは、懲戒解雇が有効とされる場合もあります。しかし、そのような事情にない場合は、兼業をしていることのみを理由に懲戒解雇まですることはできないと判断されるようです。
本来、就業時間外の行動は労働者の自由ですが、あなたのアルバイトが職務専念や秩序遵(じゅん)守の義務に触れるか否かなど総合的に判断されますので、兼業の内容などを会社に十分説明してはいかがでしょうか。
解説
多くの会社の就業規則には、「会社の許可なく他人に雇い入れられること」を禁止し、その違反を懲戒事由として定めています。
裁判例では、労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的に労働者の自由であるとし、各企業においてそれを制限することが許される範囲を限定的に解釈しています。
近年、副業・兼業を希望する労働者が増加していることを受けて、国は「働き方改革実行計画」(平成29年3月)において原則副業・兼業を認める方向を打ち出し、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定(令和2年9月改定))を作成しました。
同時に、モデル就業規則を改定し、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除して、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。・・・中略・・・事前に、会社に所定の届出を行うものとする。」という規定を新設しました。
なお、副業・兼業に当たっては、その範囲や労働時間の管理、公的保険の適用等について、労使で十分に話し合うことが必要です。
兼業理由の解雇の有効性が争われた代表的な裁判として、
解雇を有効とした裁判例
1 労務提供に支障をきたす程度の長時間の二重就職を理由とする解雇が有効とされたもの(東京地裁判決 昭57.11.19 小川建設事件)
2 競争会社の取締役への就任を理由とする懲戒解雇が有効とさたもの(名古屋地裁判決 昭47.4.28 橋元運輸事件)
解雇を無効とした裁判例
1 勤務時間前の新聞配達を理由とする懲戒解雇が無効とされたもの(福岡地裁判決 昭59.1.20 国際タクシー事件)
2 年間1、2回の貨物輸送のアルバイトを理由とする解雇が無効とされたもの(東京地裁判決 平13.6.5 十和田運輸事件)
があります。
参考
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